国内におけるメタバースの歴史
Splume(スプリューム)はVRMLという言語を使って、ユーザーがワールドを投稿できる参加型プラットフォーム。
Meet-me(ミート・ミー)は、現実のマップとリンクしたメタバースプラットフォーム。
国産のメタバースプラットフォームというととても新しいものに思うかもしれませんが、実は国産メタバースプラットフォームはclusterがパイオニアではありません。
国内で最も早くプラットフォームと呼べる3D空間型のメタバースサービスをはじめたのはおそらく「Splume(スプリューム)」が最初でしょう。またそれに続く形で「Meet me(ミートミー)」というサービスもありました。
※筆者は主にSplumeというプラットフォームで活動していました。
しかし残念ながらこれらのサービスはあまり長続きはしませんでした。この流れを受けて当時私の中で結論づけたのは、”目的のない三次元空間をディスプレイという平面の窓から覗くことに価値はない”でした。
またそこを通して見るべき主要なコンテンツもなかったのです。
メタバース第二波
しかしながら2020年あたりから世の中でまたメタバースというワードを耳にするようになってきました。
そして2021年に旧Facebook社が社名をMetaに変えたあたりからメタバースという言葉がバズワード化しはじめます。今となってみればこれは実態のない言葉の一人歩きだったように思いますが、それでも注目を浴びたのにはそれなりの背景があるものと思います。
※Googleのキーワードプランナーで調べた際に「メタバース」の複合キーワードがほぼ検索されてなかったことからも、需要の細分化がされていない様子が伺えます。
私は個人的にはメタバースに一度見切りをつけた身でありましたが、そのときから市場にはいくつかの変化が見られました。
それは、
- 高性能なVRヘッドセットの登場
- 3DCG技術の発達
- 3DCGツール(無償)の普及
- VTuber人気
今や3D空間は携帯端末からでも見れるようになり、無料で配布される3DCGツールを使えば誰でもその3D空間を作ることができます。そしてその世界で見るべきVTuberというコンテンツもある。
またVRヘッドセットの登場で、3D空間はもう平面ディスプレイの窓から覗くだけでなく、その中に入って自由に視点を動かし、物を操作できるようになりました。
これは非常に大きな変化です。
つまり改めてメタバースには発展の可能性があるという環境が訪れたということになります。
メタバースの普及の難しさ
しかしながらメタバースの普及というのはそれほど簡単なものではないでしょう。
メタバースという概念が一般の人(作り手ではない人)に受け入れられるにはその核に没入型の体験が必要と考えていますが、VRヘッドセットの普及には多くの課題があります。
- 高額な費用
- 装着の煩わしさ
- VR酔い
外出時に携帯できない時点でスマートフォンには勝てず、あくまでも嗜好品の域を出ません。リッチな体験をするためのものです。
つまりVR空間内に人が流入して経済圏を形成するに至るのはまだまだ難しいという状況です。
メタバースの発展に残された道とcluster
こういった状況の中でメタバースプラットフォームが本格的な発展まで生きながらえる道はどういったものになるでしょうか?
それはイベントを中心にtoBのビジネスモデルからはじめることだと思います。
toCのビジネスモデルでまとまった収益を上げるには大規模なユーザー数が必要になりますが、前述の通りそれは現時点では期待できないからです。
toBでイベントをフックにワールド制作などで企業からまとまった収益を得る。少ない顧客を相手に高額の単価を得る構造はリスクが高いですが当面はそれを続けながらプラットフォームを存続するしかないでしょう。
その間にメタバースを浸透させtoCのビジネスモデルを作ってゆくというハンドリングをしなければならない。なかなか難しい道のりだろうと思います。
※企業がメタバースに費用対効果を求めるようになる前に市場を構築しないといけません。
そして今まさにこれを実行しているのがcluster社なのではないかなと思っています。
clusterのtoCへの段階的移行を考えてみる
段階 | 収益化対象 | 価格帯 |
---|---|---|
1 | toB | 高 |
2 | toC(クリエイター) | 中(サブスク) |
3 | toC(一般ユーザー) | 安 |
※一般ユーザーを収益化対象にするには相当な母数が必要。また作らない人でも継続的に楽しむことができる世界になっている必要がある。
しばらくは資金調達とtoBのビジネスモデルで運用しつつ、段階的にtoCへ移行してゆかなくてはなりませんが、いきなり一般ユーザーからお金をとるというのは難しい。
そこでまずは比較的この世界と相性のよいクリエイターを中心とした経済圏を作る必要があるでしょう。現時点のclusterの様子を見ているとこの部分で試行錯誤をしているのかなと感じます。
私個人的な考えとしては、メタバースがオンラインゲームと違うのはその自由度ですので、プラットフォーム側が収益構造をがっちり方向づける必要はないと思います。収益化できる環境だけ整えてあとはクリエイターに任せればよい。
そうすればそれを使ってがっつりと稼ぐ人が出てくる。稼ぐ人はプラットフォーム側が課金のしくみを用意し、規約までまとめてくれさえすればあとは稼ぐ方法を自分で見つけ出します。
そうすればそこを受け皿としてお金が回り出すでしょう。
※ただ課金時の還元率についてはあまり取りすぎると魅力がなくなるので、そこは配慮が必要になると思います。ただ外部サービスを利用して課金できるのであればそれでもよいでしょう。
この部分を今後clusterがどうしてゆくかはわかりませんが、個人的には収益化目的のクリエイター向けにサブスクで機能提供(Webブラウザ対応、データベース、撮影・配信機能等)してゆくのが現時点では有効なんじゃないかなと考えています。
特に現時点のメタバースで言えば、中に入ってくる人以外に向けた発信も重要視するべきでしょう。高品質な映像作品を撮影したり、発信できるような機能ですね。
こういったものがあればクリエイター側は外部での認知向上と収益化に役立てることができます。
今後のメタバースの発展
そしてこれはいつになるかわかりませんが、いずれメタバースの中に入ってくる一般層の人口が増えてくればその経済圏の規模はある程度大きくなってくるんじゃないかと思います。
そしてそのときに必要なのは、メタバースの世界にメタバースならではの生活基盤(営み)ができていることだと思います。この基盤があってはじめてメタバース内のモノは使用価値(服や住まい等)を持つようになるでしょう。
この先は、スポットで見たいものを見て終わったらログアウトする世界ではなく、そこに佇んで時間を過ごしたり、その中で散策を楽しんだりできる”連続性のある世界”へ発展してゆく必要があると考えています。
こういった世界をクリエイター主導で作ってゆけるとよいですね。
なび公